イギリスの田舎を走る旅2017 Day2 ストウ=オン=ザ-ウォルド

ストウ=オン=ザ=ウォルドへ

モートン=イン=マーシュからストウ=オン=ザ=ウォルドまでA429で10kmもないくらいですが、人や車にほとんど出くわさないコッツウォルズでも、A429のような幹線道路は別。交通量が多くて、車やトラックがけっこうなスピードで走り抜けるので、サイクリングロード”コッツウォルズライン”も東へ回り込むルートになっています。

そんな迂回ルートは、小さな集落が点在しているエリアで、どこも絵になる風景。

ストウへ続く林道へ入りました。地元の人たちの生活道路になっているみたい。

この林道を抜けると延々と続く坂道で、上りきった丘、というか山の上にストウの町が見えてきました。

ストウ=オン=ザ=ウォルド、「丘の上の町」というだけあって、コッツウォルズの中でもっとも標高が高い場所(と言っても800ftなので244mですけど)。この地形のせいか紀元前から砦や要塞があって、古代ローマ帝国が敷いたローマ街道Fosse Wayを含む8つの道がこの町に集まっている交通の要所です。

イングランドは、ケルトの国からローマ帝国になり、次にアングロサクソンが入ってきて今の原型が出来上がった国だけど、ストウ(Stow)とはサクソン人の言葉でHoly place、聖なる場所を表す言葉なので、ストウ-オン-ザ-ウォルドとは”丘の上の聖地”。町のど真ん中にその時代から続く教会があります。

教会の前に広場があって、そこを取り巻くようにコッツウォルズストーンの石造りの建物が軒を連ねていて、ちょっと散策したところで小腹が空いてきた。時間もちょうどお昼時だったので、その中の一軒に入って休憩することにしました。

天候がコロコロ変わるイギリス。ちょっと前までは晴天だったのに、お店に入ろうとしたときに、突然の大雨。幸い屋根の下にいたので濡れずに済みました。冷えた体に熱いコーヒーが嬉しかったなぁ。

少し小降りになってきたので、レインウェアを着込んで、出発しました。ストウから西へ。素朴な景色。

ローワースウェルから、ローワー・スローターへ。人も車もほとんど通らない静かな道に自転車の音だけが聞こえるという贅沢な時間でした。

アーサー王伝説の誕生

コッツウォルズを南北に続くA429号線は、古代ローマ時代に作られた道Fosse Wayで、ローマ帝国がイギリスの南東部から進軍して、約100年かけて今のイングランドとウェールズを征服したときに造られたもの。

イギリスにはその頃のローマ時代の遺跡が残っていますよね。世界遺産にもなっていて、ひとつはこの後行こうとしているバース市街地。もうひとつは「ハドリアヌスの長城」。

ハドリアヌスの長城はローマ帝国がついに攻めきれなかった北のスコット人との戦いで築いた防壁で、これがほぼ今のイングランドとスコットランドの国境にあたります。

Wikipediaよりハドリアヌスの長城

歴史的にはその頃がローマの最盛期で、イギリスから一斉に撤退した後に訪れたのは、ケルトとアングロサクソンの衝突で、結果的にアングロサクソンが今のイングランドに王国を建てることに。

イングランドという国名は”アングル人の土地”という意味だし、イギリスの町の名前で、バーミンガムやブライトンのように、語尾に〜ハム、〜トンがつく所はアングロサクソンがその時代に作った町です。

イングランドを追い出されたケルトは、ウェールズ、コーンウォール、アイルランド、フランスのブルターニュに散り散りになった結果、これらの地域は現代でもケルト諸語圏として文化が受け継がれていますよね。フランスのブルターニュは”小ブリテン”という意味で、これも地名が歴史を表す例。

このときケルトからアングロサクソンにジダイガ変わろうとしているときの戦いが伝承として受け継がれ、後世にできた物語がアーサー王伝説。自分の中では敗戦を重ねる中で各地に逸話を残していった平家物語と被るんですよね。

Wikipediaより円卓の騎士