「羊の丘」という意味を持つイギリスの典型的なカントリーサイド、コッツウォルズ。イギリスに46ある特別自然美観地域(Area of Outstanding Natural Beauty ANOB)の1つで、石造りの村々や庭園、丘陵に牧草が広がる地湖水地方と並ぶ人気の観光エリアです。2日目はストラトフォードアポンエイヴォンを出て、コッツウォルズを北から南へ縦断しました。
ストラトフォード=アポン=エイヴォンからコッツウォルズへ
2日目の朝、小雨の中、ホテルを出発してまずクロプトン橋へ。なんせイギリスなので、30~60分おきに多少の雨に降られるだろうと覚悟していたものの、スタートから早速レインウェアを羽織ることになるとは。肌寒い中、クロプトン橋からシェイクスピア劇場を南へ走りはじめました。
ハンドルに取り付けたガーミンに出発前にルートを入れておいたので、そのマップを見ながら走ろうと思っていたのに電源を入れても中々表示されないので、仕方なくスマホのGoogleマップを頼りに町の端まで行き、ストラトフォード=アポン=エイヴォンのオールドタウンというエリアから、サイクリングロードNational Cycle NetworkのNo.5でまずはロングマーストンという町へ。
Googleで確認してみると、写真の下の方のラウンドアバウト(円状の交差点)あたりがオールドタウン付近。そこから上に伸びてエイヴォン川を超えて続く白い道がサイクリングロードNational Cycle NetworkのNo.5です。
この区間は、舗装されていない砂利道なので、雨が降ると水たまりもできます。こんな時ディスクブレーキだと、かっ飛ばしても安心。
動画です。
サイクリングロードを走っているうちに雨も上がって、少しずつ空が明るくなってきました。
写真には写っていませんが、右も左も草っ原。羊、馬、牛がいます。こんな風景。いつも鉄道からしか見ていなかったイギリスの典型的な景色が目の前に。
ロングマーストンからちょっと走った先のペブワースという村のManson Armsというパブの前で水分補給。このすぐ先にハニーボーンという鉄道が通る村がありからはNational Cycle route442に入ります。サイクリングロードの通称もThe Cotswolds Line。いよいよコッツウォルズです!
イギリスのサイクリングロードは、ドイツやフランスと比べると車の通りが少ない一般道(裏道)がコースとして設定されていることが多いようです。そして平坦な道は思っていたよりも少ない。「羊の丘」の名の通り、コッツウォルズラインに入ってからは木立の向こうに丘が見える様になって来ました。
この頃までは、小雨が降ったり止んだりでぐずついた天気で、傘を手に散歩をしている人も。
いくつかの丘を越えた頃、だんだん青空が広がってきました。雨の後の澄んだ空気がとても気持ち良い!
少し高い所にくると遠くまで見渡せます。そして牧草地にはたくさんの羊。
コッツウォルズのローマ街道
今では田園風景に囲まれたのどかな丘陵地帯コッツウォルズも、約2000年前はローマ帝国がイギリスに攻め込んだ時にケルトとの戦争の真っ只中にあった場所。ローマ帝国が攻め込んでいった地域には、ほぼ必ずと言っていいほど軍用道路が敷設されますが、ここコッツウォルズにも南北にFosse wayというローマ街道が通っています。ローマ街道は元は軍用道路なので、目的地に最短で着くように造られた真っ直ぐの道路。コッツウォルズの地図を見ると一目瞭然なんですが、今のA4291号線がFosse Wayの現代の姿。当時はリンカーンからエクセターまで続いた長距離幹線です。昔はローマの軍団や戦車が行き来していたはずのFosse Wayを縫うように、丘陵地帯の南へと走りました。
まずはチッピングカムデンへ
自転車で走っているうち、天気は快晴に。写真をとっていると、丘の向こうには虹がかかっていました。コッツウォルズのエリアに入った途端、アップダウンの連続が始まりましたが、この景色とカントリーサイドの雰囲気がその辛さを忘れさせてくれそう。
ハニーボーンからルートに沿って走ると、ミックルトン経由でチッピングカムデンという町のど真ん中に辿り着きます。このチッピングとは「市場」という意味。カムデン「牧草地に囲まれた谷」というような意味。昔は羊毛の取引で栄えた町で、東西に走るハイストリートの両脇に蜂蜜色をした石灰石で建てられた建物が整然と並ぶとても静かなところです。
全体的にとても綺麗な町で、コッツウォルズの中でも人気のある町。この前方に「マーケットホール」が、後方にはセント・ジェームズ教会があります。セント・ジェームズ教会は羊毛商人や農民の財によって拡大したもので、こういう教会をウール教会というんだそうです。
町の中心には、最初の写真にある、中世の市場跡「マーケットホール」が残されています。このホールは今でもそのまま中に入れるようなので、ちょっとのぞいてみたところ、石造りの床が歴史を感じさせる場所。なにせ、このマーケットホールが建てられたのは清教徒革命、ピューリタン革命の時代のこと。
マーケットホールの目の前にはツーリストインフォーメーションや小さいスーパーマーケットがあったので、スーパーマーケットで食料と水を補給。朝は食事を取らずに、スナックを頬張っていただけなので、ホール脇のベンチで簡単な食事を済ませました。
ところで、自転車じゃなければの話ですが、ここチッピングカムデンからANOBを縦断してバースまで、Cotswold wayという102マイル(約164km)のトレイルがあります。歩いても楽しそうな場所。