投稿者: てつたろeurotraveler

  • EV1 スペイン中央部

    EV1 スペイン中央部

    EuroVelo 1 · ES · Overview

    銀の道からバスクへ

    大西洋の潮風を背に国境を越えると、景色は一変する。そこに広がるのは、2000年前にローマ人が敷いた石畳の記憶と、乾いた太陽が支配するイベリア半島の中心部です。EuroVelo1の中でも最も歴史の密度が濃いセクション、『銀の道』の旅が始まります。

    OVERVIEW

    ルート概要

    スペインを南北に縦断する「銀の道(ビア・デ・ラ・プラタ)」は、紀元1世紀にローマ帝国が建設した軍用道路を起源とする歴史的な古道です。その名は銀の輸送路を意味するのではなく、アラビア語で「舗装された道」を指す「バラータ」という言葉が、スペイン語で銀を意味する「プラタ」に転訛したことに由来するといわれています。中世以降は、スペイン南部から聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指す巡礼路としての役割も担うようになりました。

    地形的には、イベリコ豚が放牧される樫の森「デエサ」や、標高が高く乾燥した中央台地「メセタ」が延々と続くのが特徴です。遮るもののない地平線へと続く直線道路は、海沿いのポルトガルとは対照的な、峻烈な太陽と赤茶けた大地の風景をサイクリストに見せてくれます。

    沿道には、巨大なローマ劇場が残るメリダ、中世の石造りの街並みが完璧に保存されたカセレス、そしてスペイン最古の大学を抱くサラマンカといった世界遺産の都市が点在しています。この内陸の風景の中には、ローマ時代の橋や里程標が今も息づいており、2000年の時を超えて歴史の鼓動をダイレクトに感じることができるルートとなっています。

    北部のバスク地方は、ピレネー山脈の険しい山々と大西洋の荒波に挟まれた、独特の言語と文化を持つ神秘的なエリアです。銀の道を北上し、カンタブリア海に突き当たると現れるこの地は、ポルトガルやカスティージャ地方とは全く異なる、しっとりと濡れた緑の風景が広がっています。

    この地方の代名詞ともいえるのが、世界中の美食家を惹きつける圧倒的な食文化です。サン・セバスティアンの旧市街には、芸術的な小皿料理「ピンチョス」が並ぶバルがひしめき、美食家たちの社交場となっています。司馬遼太郎氏も、バスク人の独立心旺盛で誇り高い気質と、その文化を育んだ複雑な地形に深い関心を寄せ、彼らを「ヨーロッパの古層を今に伝える人々」として描きました。

    ハイライト

    CULTURE

    ローマ街道から巡礼路へ

    ルートの核となるのは、紀元1世紀にローマ人が築いた軍用道路としての歴史です。 帝国の動脈として、 南のセビリアから北のアストルガまでイベリア半島の豊かな資源を運ぶために石畳で舗装されました。今も沿道には、当時の里程標(マイルストーン)や堅牢な石橋が点在し、かつてローマの軍団が歩いた足跡をダイレクトに辿ることができます。中世に入ると、イスラム勢力から奪還された土地を通り、南部の人々が聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指す「巡礼の道」へと役割を変え、信仰の道として再生しました。

    LANDSCAPE

    メセタとデエサ

    景観はポルトガルの海岸線とは劇的に異なります。

    メセタはスペイン中央部を占める広大な乾燥台地で、 夏はフライパンと呼ばれるほどの酷暑に見舞われますが、冬から春にかけては地平線まで続く緑の野原が美しく、飾らない剥き出しの大地の力強さがこの地の本質です。エストレマドゥーラ地方には、樫の木が点在する広大な放牧地「デエサ」が広がります。ここは世界最高峰のハモン・イベリコを生むイベリコ豚の故郷であり、自然と人間が共生する独特の農牧風景を作り出しています。

    一方、アンダルシアやカスティージャの乾燥した黄色いスペインとは対照的に、バスク一帯は一年中雨が多く、しっとりとした緑に覆われています。ピレネー山脈の末端が海に落ち込む複雑な地形で、平地が極端に少ないのが特徴です。この「狭い平地をいかに活用するか」という切実な問題が、ビスカヤ橋のような革新的な建築を生む原動力となりました。

    FOOD

    イベリコ豚と美食クラブ文化

    スペイン内陸部は、肉と豆を中心とした力強く素朴な料理を味わうことができます。その主役は、ルートの大部分を占める樫の森「デエサ」が育むイベリコ豚であり、ここで生産される最高級の生ハム「ハモン・イベリコ」は、この地の風土が凝縮された至高の逸品といえます。また、燻製にしたパプリカ粉(ピミエントン)を多用するのも特徴で、チョリソや煮込み料理に深みのある香りと情熱的な赤色を添えています。

    バスク地方では、豊かな雨が良質な牧草を育て、山ではチーズが、海では荒波に揉まれた魚介類が獲れ、多様な食材を背景に世界一とも言われるバスクの美食文化が花開きました。バスクには「ソシエダ・ガストロノミカ」という男性限定の会員制料理クラブが数百も存在します。ここではプロ・アマ問わず、男性たちが厨房に立ち、互いに料理を振る舞い、レシピを惜しみなく共有します。この「料理を哲学し、競い、共有する」という独自の土壌が、地域全体の調理技術を底上げしています。

    DETAILS

    セクション別詳細

    いくつかのセクションに分けて、通過地・世界遺産・歴史風土を順に紹介します。

    SECTION 1

    アヤモンテからメリダ

    ポルトガル国境のアヤモンテから、銀の道の起点へと向かう区間です。オリーブ畑が地平線まで続くアンダルシア特有の風景の中を走り、徐々に「デエサ(樫の森)」が広がるエストレマドゥーラ地方へと入ります。ゴールとなるメリダでは、保存状態の良い巨大なローマ遺跡群が、2000年前の帝国の繁栄を今に伝えています。

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    SECTION 2

    メリダからサラマンカ

    本格的な「銀の道」の核心部を北上する区間です。遮るもののない広大な中央台地(メセタ)を直線道路が貫き、強烈な太陽と赤茶けた大地が旅人の精神を試します。ハモン・イベリコの故郷を通り抜け、中世の迷宮カセレスを経て、夕暮れ時に黄金色に輝く大学の街サラマンカへと至る、歴史の重みを感じるルートです。

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    SECTION 3

    サラマンカからブルゴス

    地平線へと続く麦畑が広がる、カスティージャ・イ・レオン州の平原をゆく区間です。銀の道を離れ、東へ進路を変えながら「フランスの道(サンティアゴ巡礼路のメインルート)」と合流します。ゴシック建築の最高傑作である大聖堂を抱くブルゴスを目指し、巡礼者たちの熱気と広大な空の青さを肌で感じる旅となります。

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    SECTION 4

    ブルゴスからイルン

    乾燥した内陸部を脱し、険しい山々を越えて大西洋へと下る区間です。風景は乾いた茶色から、霧に濡れた深い緑へと変化し、独特の文化を持つバスク地方へと入ります。鉄鋼業の歴史を刻むビルバオを経て、最後は美食の街サン・セバスティアンを通り、フランス国境のイルンへと辿り着くルートです。

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    旅のヒント

    アクセス

    SECTION1 アヤモンテからメリダ
    アヤモンテの隣ウエルバが鉄道の拠点となります。セビリアからウエルバへ入り、そこからバスや自走でアヤモンテに向かうのが一般的。
    メリダはウエルバやセビリアから中距離列車が運行されています。
    SECTION2 メリダからサラマンカ
    かつてはこの区間を南北に結ぶ路線がありましたが、現在は廃線となり、一部はサイクリングロードとなっています。直通列車がないため、鉄道での移動が必要な場合は一度マドリードを経由するなど大回りとなります。
    SECTION3 サラマンカからブルゴス
    サラマンカはマドリードとの接続が非常に良く高速列車も乗り入れています。ブルゴスはフランス国境へ向かう主要幹線の上にあり、鉄道の利便性が一気に高まります。
    SECTION 4 ブルゴスからイルン
    この区間は非常に鉄道が充実しています。ブルゴスからビルバオやサン・セバスティアン、終点のイルンまで頻繁に列車が運行されています。

    補給・宿

    SECTION 1 & 2(アンダルシア・エストレマドゥーラ)は 最も注意が必要な区間で、補給が難しい荒野が続きます。飲料や食料を事前に確保してください。また、シエスタ文化で 14時〜17時頃は商店が完全に閉まります。午前中にその日の食料を確保しておくのが鉄則です。

    SECTION 3 & 4(カスティージャ・バスク)は 巡礼のメインルートと重なるため、数キロおきに村やカフェがあるので補給の心配は少なくなりますが、バスク地方の山岳地帯ではアップダウンが激しく体力を消耗するので携帯食(ナッツやチョコ)を忍ばせておくと役立ちます。

    気候・装備

    内陸部は夏場の気温が40℃を超えることも珍しくありません。
    標高が高いサラマンカ周辺などは、夏は暑く冬は氷点下まで冷え込む大陸性気候の特徴が顕著となります。また、一日の中での寒暖差も大きいため、朝晩の防寒対策が欠かせません。
    年間を通じて降水量が少なく乾燥しているため、未舗装路では砂埃にさらされます。

  • EV1 ポルトガル編

    EV1 ポルトガル編

    EuroVelo 1 · PT · Overview

    大航海時代の記憶を辿る海岸線

    スペインから続くEuroVelo 1は、ポルトガルに入るとその表情をさらに豊かに変えていきます。北の国境から南のアルガルヴェ地方まで、大西洋の海岸線をほぼ全行程で寄り添うように走るポルトガル区間の全貌をまとめました。

    OVERVIEW

    ルート概要

    ポルトガルのEV1は、起伏に富んだ海岸線、歴史的な漁村、そして活気あふれる近代都市を繋ぐ、ダイナミックなルートです。と言っても、単なる海岸線ルートではありません。ここは世界が初めて丸いと証明された場所へと続く、大航海時代の野心と中世の信仰が幾重にも重なる歴史の道です。

    北部のルートは、サンチャゴへの巡礼路(カミーノ)と重なり、南部に比べて雨が多く瑞々しい緑に覆われています。建物は花崗岩で造られ、湿り気を帯びた重厚な歴史を感じさせます。ルート上には、エンリケ航海王子が航海術の研究機関を設立したサグレスや、冒険者たちが世界へ旅立ちそして帰還した場所で、当時のポルトガルの富を象徴するベレンの塔があり、大航海時代の痕跡をたどることができます。南部は地中海の影響が強まり、景色は一変して乾燥した黄金色の断崖とエメラルドグリーンの海へ。アラブ統治時代の名残で、家々は白壁で造られ、屋根には独特の透かし彫り煙突が見られ、ルートの締めくくりとなる スペイン国境のヴィラ・レアル・デ・サント・アントニオまで、白い街並みと断崖絶壁が連続するリゾートエリアが続きます。

    ハイライト

    CULTURE

    大航海時代とテンプル騎士団

    ポルトガルという国の成り立ちは、イスラムから土地を奪還する十字軍の歴史そのものです。テンプル騎士団は建国を軍事・資金面で支えた存在で。ルートから内陸にあるトマール(内陸ですがアクセス圏内)が彼らの本拠地。のちにキリスト騎士団と名を変え、エンリケ王子が率いました。ルートには、のハイライトであるサグレスは、エンリケ航海王子が航海術の研究機関を設立したサグレスや、未知の海へ船を送り出し、そして帰還した場所であるテージョ川沿いのベレンの塔、ジェロニモス修道院があります。これらはマヌエル様式という当時の富を象徴する装飾で彩られています。

    WORLD HERITAGE

    世界遺産

    ポルト歴史地区 ドウロ川沿いに広がる美しい街並みが広がっており、アズレージョ(青いタイル)の教会、ドン・ルイス1世橋などの名所が並んでいます。サン・ベント駅には2万枚ものアズレージョで歴史的場面が描かれています。

    リスボンのジェロニモス修道院とベレンの塔  大航海時代の栄華や貿易で得た莫大な富を象徴する建築物です。ヴァスコ・ダ・ガマやコロンブス、マゼランたちが船を出したのは、修道院がある場所のすぐ近くを流れるテージョ川の岸。織田信長の時代にやってきた「南蛮人」のルーツがここにあります。

    シントラの文化的景観 リスボンから西へ約30km、深い森に覆われた山塊に位置する「エデン」とも称される、王族の避暑地として知られるおとぎの国です。単なる「建造物」ではなく「文化的景観」として登録された点がポイント。これは、自然と建築が見事に融合し、ヨーロッパに「ロマン主義」という新しい景観デザインの先駆けをもたらしたことが評価されたためです。

    トマールのキリスト教修道院 12世紀にテンプル騎士団の城塞として築かれたポルトガル最大規模の修道院建築群です。

    LANDSCAPE

    緑豊かな山岳から乾燥した断崖絶壁へ

    ポルトガル国内ルートの地形は、北から南へ向かうにつれて緑豊かな山岳と石畳から広大な平原、そして劇的な断崖絶壁へとダイナミックに変化します。スペイン国境から続く北部はリアス式海岸と起伏の連続で、地形的には細かいアップダウンが続くリアス式海岸に近い特徴を持っています。歴史的な町が多く、石畳(パヴェ)の路面が頻繁に現れます。ポルトからリスボンあたりの中部は、地形は一気に平坦になります。海岸線には広大な砂丘や、アヴェイロに代表されるリア(ラグーン)が広がります。ただし、海岸線はアップダウンありです。
    リスボン以南はアレンテージョ地方のなだらかな丘陵地帯が続きます。サグレスに近づくにつれ、地形は荒々しい断崖絶壁(ファレシア)へと変わり、地面は乾燥した赤土が目立つようになります。サグレス岬付近は、遮蔽物のない吹きさらしの台地です。

    FOOD

    食文化

    バカリャウ(塩漬け干し鱈)は「365日別の調理法がある」と言われるほど愛されている国民食で、大航海時代の保存食がルーツです。鰯(サルディーニャ)やタコをシンプルに炭火で焼き、オリーブオイルと岩塩で食べるスタイルも王道。

    修道院生まれのスイーツ、エッグタルトは修道院が発祥。卵黄をたっぷり使った濃厚なクリームとパリパリのパイ生地はサイクリストの最高の補給食です。

    ドウロ川上流の急斜面で栽培されたぶどうから作られるワイン。発酵の途中でブランデーが入れられます。
    発酵が止まることでブドウの糖分が残り、「甘口」でアルコール度数が高い仕上がりになります。
    17世紀、フランスとの戦争でワインが入手できなくなったイギリスで、このポートワインが輸入されるようになりました。
    ポルトのガイア地区市内にはイギリス資本のワイン・ロッジが多数あります。

    DETAILS

    セクション

    この区間を いくつかのセクションに分けて、通過地・世界遺産・歴史風土などを順に紹介します。

    SECTION 1

    ヴァレンサからポルト

    スペインとの国境を分かつミーニョ川沿いからスタート。この区間は「ポルトガルの道」と呼ばれるサンティアゴ巡礼路と重なり、歴史的な石畳や古い村々を抜ける緑豊かなセクションです。ポルトガルでも特に雨が多く、瑞々しいブドウ畑(ヴィーニョ・ヴェルデの産地)が広がります。

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    SECTION 2

    ポルトからリスボン

    ポルトガルが誇る2大都市を繋ぐメインセクション。海岸線に沿って、アヴェイロの運河やナザレの巨大な断崖など、ダイナミックな景観が続きます。強い海風、断崖の間の砂丘、ラグーン(潟湖)など、ポルトガルの豊かな風景が見られます。カモンイスが「ここに地終わり、海始まる(Onde a terra se acaba e o mar começa)」と詠んだユーラシア大陸最西端のロカ岬はこの区間にあります。

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    SECTION 3

    リスボンからサグレス

    リスボンをテージョ川沿いに離れると、開発の手を逃れたアレンテージョ地方の「野生の海岸」に入ります。観光地化されていない素朴な漁村と、切り立った断崖が続き、、乾燥した土地にコルク樫の森が点在しています。EuroVelo1のルートの最南端でサイクリストにとって最も孤独な区間です。

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    SECTION 4

    サグレスからヴィラ・レアル・デ・サント・アントニオ

    荒々しい大西洋から、穏やかな地中海の影響を受けたアルガルヴェ地方へ。断崖絶壁は黄金色の岩肌に変わり、ルートは再び賑やかなリゾート地や塩田の間を縫うように走ります。年間300日が晴天と言われる地中海らしい温暖な気候に変わります。

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    計画のヒント

    アクセス

    ポルトガル鉄道(CP – Comboios de Portugal)は、自転車の持ち込みに対して非常に寛容で多くの区間でそのまま載せられるため、サイクリストにとって心強い味方です。各区間の主要な町では鉄道アクセスも比較的スムーズですが、SECTION3のリスボンからサグレス区間は、鉄道空白地帯で「鉄道の難所」として知られており、注意が必要です。

    補給・宿

    ポルトガルの田舎では、13:00〜15:00頃にレストランや商店が閉まることがあります。 12:30までにはランチや補給を済ませるか、それまでに午後の行動食を確保しておくといいです。とくにリスボンからサグレス区間は最も注意が必要で、 Sines(シネス)を過ぎると店が激減します。補給できる店やスーパーを見つけたら、飲料、パン、バナナ、ナッツなどを買い込んでおきましょう。

    気候・装備

    ポルトガルは南北に長い国で、全域で「大西洋の風」強く吹きます。サイクリストにとって、気温以上に「風向き」が旅の難易度を左右します。海岸線では夏場を中心にノルテ(Nortada)と呼ばれる北風が強く吹きますので、南北1,200kmは北から南に走ると楽なはず。(ぼくもポルトガルの北風経験者。) また、海から10km内陸に入るだけで気温が5°C以上上がります。ルートを外れて内陸を走る際などは、暑さ対策や熱中症対策をしてください。

  • EV1 フランス編

    EV1 フランス編

    EuroVelo 1 · FR · Overview

    美食と世界遺産を繋ぐ大西洋縦断の道

    フランス国内のEuroVelo 1は、通称「La Vélodyssée(ラ・ヴェロディセ)」と呼ばれ、フランスで最も人気のあるサイクリングルートの一つです。南のピレネー山脈の麓から北のブルターニュの海岸まで、大西洋の荒波と静かな運河を交互に楽しめるルートです。

    OVERVIEW

    ルート概要

    フランス南西端のアンダイエ(スペイン国境)から、ブルターニュ地方のロスコフまでを結ぶ約1,200km。このルートの最大の特徴は、「圧倒的な走りやすさ」です。ルートの約80%が自動車通行禁止のサイクリング専用道で、その多くが平坦な松林や運河沿いにあります。初心者からベテランまで、フランスの自転車文化を体感できる「サイクリストの聖地」です。

    ハイライト

    HISTORY & CULTURE

    海賊の街とナポレオンの夢

    アンダイエ〜ビアリッツ: かつてバスクの捕鯨船や海賊が拠点とした荒々しい海岸線です。ビアリッツは、ナポレオン3世とその妻ウジェニーが愛したことで、ヨーロッパ屈指の高級リゾートへと変貌した歴史を持ちます。

    ナント・ブレスト運河: ルートの北半分を占めるこの運河は、ナポレオン・ボナパルトが英国による海上封鎖に対抗し、内陸の物資輸送路として建設を命じたものです。

    WORLD HERITAGE

    世界遺産

    ボルドー(月の港) 18世紀の建築美が残る世界遺産の街。ルートから少し足を伸ばす価値があります。

    サン・ジャック・デ・コンポステーラの巡礼路  南部の区間は、北欧や英国からの巡礼者が歩いた道と重なります。

    モン・サン・ミッシェル(遠景) 直接ルート上ではありませんが、ブルターニュ付近ではその精神文化の影響を強く感じることができます。

    LANDSCAPE

    松林と運河

    南部(アキテーヌ地方): どこまでも続く広大な松林(ランドの森)が太陽を遮り、心地よい木漏れ日の下を走ります。海岸線にはサーフィンのメッカが点在します。アルカション近郊にはヨーロッパ最大の砂丘、ピラ砂丘があります。毎年少しずつ内陸へ移動しており、かつての松林を飲み込んでいく自然のエネルギーを感じさせる逸話に溢れています。

    中部(ペイ・ド・ラ・ロワール地方): 塩田(ゲランドなど)が広がり、空と水の境界が曖昧になる幻想的な風景が広がります。

    北部(ブルターニュ地方): 運河沿いの静かな緑のトンネルから、最後はロスコフの荒々しい岩礁海岸へ。潮の満ち引きの差が激しく、ダイナミックな海の表情が楽しめます。

    FOOD

    シーフードとワイン

    バスク料理 ピマン・デスペレット(唐辛子)を効かせた生ハムや、ガトー・バスク。
    アルカションの牡蠣  砂丘を眺めながら、産地直送の生牡蠣と白ワインで休憩。
    ボルドーワイン  世界最高峰のワイナリー地帯を走り抜ける贅沢。
    塩バターとガレット(北部)  ブルターニュに入ると補給食の主役はクレープとシードル(リンゴ酒)に変わります。

    DETAILS

    セクション

    この区間を 80〜100 km 程度のセクションに分けて、通過地・世界遺産・歴史風土を順に紹介します。

    SECTION 1

    アンダイエからアルカション

    スペイン国境のアンダイエから始まるこの区間は、バスク地方の起伏に富んだ海岸線からスタートします。ビアリッツなどの高級リゾート地を抜けると、道は一転して「ランドの森」と呼ばれるヨーロッパ最大級の松林の中を貫く、真っ直ぐで平坦な専用道へと変わります。

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    SECTION 2

    アルカションからラ・ロシェル

    アルカション湾をフェリー(渡船)で横断し、フェレ岬へと渡るドラマチックな展開で始まります。その後、メドック地方の広大な松林と湖を抜け、ジロンド川の河口を再びフェリーで渡ります。全体的に非常に平坦で、砂浜と並走するセクションが多いのが特徴です。

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    SECTION 3

    ラ・ロシェルからナント

    歴史的な港町ラ・ロシェルを出発し、「グリーン・ヴェニス(緑のヴェニス)」と呼ばれるマレ・ポワトヴァン湿地帯の端をかすめます。ヴァンデ地方の海岸線は美しいビーチが連なっています。

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    SECTION 3

    ナントからロスコフ

    ナントからは「ナント・ブレスト運河」に沿って内陸のブルターニュへと入ります。かつての鉄道跡を利用したグリーンウェイや運河の曳舟道(ひきふねみち)は、起伏がなく非常に穏やかです。最後はロスコフへと辿り着きます。

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    旅のヒント

    アクセス

    フランス国内のEuroVelo1(La Vélodyssée)は、フランス国鉄(SNCF)の路線網と非常に相性が良く、万が一のトラブルや行程の短縮、特定区間だけのサイクリングにとても便利です。※と言っても海岸沿いから鉄道駅まで30~40kmはあります。自転車のりならすぐ。ルート上で鉄道(特に自転車を載せやすい地域列車TER)に接続しやすい主要な街を、南から順にリストアップしました。

    このエリアは海岸線に沿って鉄道が走っているため、輪行が容易です。

    アンダイエ  スタート地点。スペインおよびフランス全土への始発駅です。

    サン・ジャン・ド・リュズ バスク地方の美しい港町。

    ビアリッツ 高級リゾート。駅は中心部から少し離れていますが接続可能。

    バイヨンヌ  鉄道の要所。ここからボルドー方面やピレネー方面へ分岐します。

    アルカション ピラ砂丘への玄関口。ボルドー行きのTERが頻繁に出ています。

    島や湿地帯を通るため、接続ポイントを見極めるのがコツです。

    ラ・ロシェル 観光の拠点。歴史的な駅舎があり、パリ直行のTGVも発着します。

    ロシュフォール 湿地帯を抜けた後の重要な接続点。

    レ・サブル=ドロンヌ ヨットレース「ヴァンデ・グローブ」の出発地として有名な港町。

    ナント  ルート最大の都市の一つ。ここからルートは「運河沿い」に入ります。

    ナント・ブレスト運河沿いは鉄道から離れる区間が多いので注意が必要です。

    ルドン 運河沿いのルート上で貴重な鉄道の交差点。レンヌやナント、ロリアン方面へ接続。

    ポンティヴィ  運河沿いの中間地点。

    カレ かつての鉄道のハブ。現在は一部路線のみですが、ブルターニュ内陸の重要な街です。

    モルレー 巨大な高架橋が有名な街。ロスコフまであと一歩の地点。

    ロスコフ 終着点。ここからモルレー行きの列車(または代行バス)が出ています。

    補給・宿

    Accueil Vélo(アキュイユ・ヴェロ)認証マークは要チェック。これは自転車旅行者に優しい宿や修理店を示す公式ロゴです。これを知っているだけで自転車旅の安心感が格段に上がります。

    気候・装備

    北と南では気温や風の性格が異なります。

    北部(ロスコフ〜ナント)は変化の激しいブルターニュ気候で 「1日に四季がある」と言われるほど天気が変わりやすい。防水ジャケットは常に手元にあったほうがいいです。

    中部(ナント〜ラ・ロシェル)は 日照時間の長い「ミクロクリマ」 。比較的温暖で晴天率が高く、海からの湿った風が心地よいが、遮るものがないため湿地帯は直射日光に注意です。

    南部(アルカション〜アンダイエ) は温暖でパワフルな陽光が降り注ぎます。フランス国内でも日照時間が長く、夏はかなり暑くなります。松林の中は日陰で涼しいかも。