EuroVelo 1 · PT · Overview
大航海時代の記憶を辿る海岸線
スペインから続くEuroVelo 1は、ポルトガルに入るとその表情をさらに豊かに変えていきます。北の国境から南のアルガルヴェ地方まで、大西洋の海岸線をほぼ全行程で寄り添うように走るポルトガル区間の全貌をまとめました。
OVERVIEW
ルート概要
ポルトガルのEV1は、起伏に富んだ海岸線、歴史的な漁村、そして活気あふれる近代都市を繋ぐ、ダイナミックなルートです。と言っても、単なる海岸線ルートではありません。ここは世界が初めて丸いと証明された場所へと続く、大航海時代の野心と中世の信仰が幾重にも重なる歴史の道です。
北部のルートは、サンチャゴへの巡礼路(カミーノ)と重なり、南部に比べて雨が多く瑞々しい緑に覆われています。建物は花崗岩で造られ、湿り気を帯びた重厚な歴史を感じさせます。ルート上には、エンリケ航海王子が航海術の研究機関を設立したサグレスや、冒険者たちが世界へ旅立ちそして帰還した場所で、当時のポルトガルの富を象徴するベレンの塔があり、大航海時代の痕跡をたどることができます。南部は地中海の影響が強まり、景色は一変して乾燥した黄金色の断崖とエメラルドグリーンの海へ。アラブ統治時代の名残で、家々は白壁で造られ、屋根には独特の透かし彫り煙突が見られ、ルートの締めくくりとなる スペイン国境のヴィラ・レアル・デ・サント・アントニオまで、白い街並みと断崖絶壁が連続するリゾートエリアが続きます。
ハイライト
CULTURE
大航海時代とテンプル騎士団
ポルトガルという国の成り立ちは、イスラムから土地を奪還する十字軍の歴史そのものです。テンプル騎士団は建国を軍事・資金面で支えた存在で。ルートから内陸にあるトマール(内陸ですがアクセス圏内)が彼らの本拠地。のちにキリスト騎士団と名を変え、エンリケ王子が率いました。ルートには、のハイライトであるサグレスは、エンリケ航海王子が航海術の研究機関を設立したサグレスや、未知の海へ船を送り出し、そして帰還した場所であるテージョ川沿いのベレンの塔、ジェロニモス修道院があります。これらはマヌエル様式という当時の富を象徴する装飾で彩られています。
WORLD HERITAGE
世界遺産
ポルト歴史地区 ドウロ川沿いに広がる美しい街並みが広がっており、アズレージョ(青いタイル)の教会、ドン・ルイス1世橋などの名所が並んでいます。サン・ベント駅には2万枚ものアズレージョで歴史的場面が描かれています。
リスボンのジェロニモス修道院とベレンの塔 大航海時代の栄華や貿易で得た莫大な富を象徴する建築物です。ヴァスコ・ダ・ガマやコロンブス、マゼランたちが船を出したのは、修道院がある場所のすぐ近くを流れるテージョ川の岸。織田信長の時代にやってきた「南蛮人」のルーツがここにあります。
シントラの文化的景観 リスボンから西へ約30km、深い森に覆われた山塊に位置する「エデン」とも称される、王族の避暑地として知られるおとぎの国です。単なる「建造物」ではなく「文化的景観」として登録された点がポイント。これは、自然と建築が見事に融合し、ヨーロッパに「ロマン主義」という新しい景観デザインの先駆けをもたらしたことが評価されたためです。
トマールのキリスト教修道院 12世紀にテンプル騎士団の城塞として築かれたポルトガル最大規模の修道院建築群です。
LANDSCAPE
緑豊かな山岳から乾燥した断崖絶壁へ
ポルトガル国内ルートの地形は、北から南へ向かうにつれて緑豊かな山岳と石畳から広大な平原、そして劇的な断崖絶壁へとダイナミックに変化します。スペイン国境から続く北部はリアス式海岸と起伏の連続で、地形的には細かいアップダウンが続くリアス式海岸に近い特徴を持っています。歴史的な町が多く、石畳(パヴェ)の路面が頻繁に現れます。ポルトからリスボンあたりの中部は、地形は一気に平坦になります。海岸線には広大な砂丘や、アヴェイロに代表されるリア(ラグーン)が広がります。ただし、海岸線はアップダウンありです。
リスボン以南はアレンテージョ地方のなだらかな丘陵地帯が続きます。サグレスに近づくにつれ、地形は荒々しい断崖絶壁(ファレシア)へと変わり、地面は乾燥した赤土が目立つようになります。サグレス岬付近は、遮蔽物のない吹きさらしの台地です。
FOOD
食文化
バカリャウ(塩漬け干し鱈)は「365日別の調理法がある」と言われるほど愛されている国民食で、大航海時代の保存食がルーツです。鰯(サルディーニャ)やタコをシンプルに炭火で焼き、オリーブオイルと岩塩で食べるスタイルも王道。
修道院生まれのスイーツ、エッグタルトは修道院が発祥。卵黄をたっぷり使った濃厚なクリームとパリパリのパイ生地はサイクリストの最高の補給食です。
ドウロ川上流の急斜面で栽培されたぶどうから作られるワイン。発酵の途中でブランデーが入れられます。
発酵が止まることでブドウの糖分が残り、「甘口」でアルコール度数が高い仕上がりになります。
17世紀、フランスとの戦争でワインが入手できなくなったイギリスで、このポートワインが輸入されるようになりました。
ポルトのガイア地区市内にはイギリス資本のワイン・ロッジが多数あります。
DETAILS
セクション
この区間を いくつかのセクションに分けて、通過地・世界遺産・歴史風土などを順に紹介します。
SECTION 1
ヴァレンサからポルト
スペインとの国境を分かつミーニョ川沿いからスタート。この区間は「ポルトガルの道」と呼ばれるサンティアゴ巡礼路と重なり、歴史的な石畳や古い村々を抜ける緑豊かなセクションです。ポルトガルでも特に雨が多く、瑞々しいブドウ畑(ヴィーニョ・ヴェルデの産地)が広がります。
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SECTION 2
ポルトからリスボン
ポルトガルが誇る2大都市を繋ぐメインセクション。海岸線に沿って、アヴェイロの運河やナザレの巨大な断崖など、ダイナミックな景観が続きます。強い海風、断崖の間の砂丘、ラグーン(潟湖)など、ポルトガルの豊かな風景が見られます。カモンイスが「ここに地終わり、海始まる(Onde a terra se acaba e o mar começa)」と詠んだユーラシア大陸最西端のロカ岬はこの区間にあります。
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SECTION 3
リスボンからサグレス
リスボンをテージョ川沿いに離れると、開発の手を逃れたアレンテージョ地方の「野生の海岸」に入ります。観光地化されていない素朴な漁村と、切り立った断崖が続き、、乾燥した土地にコルク樫の森が点在しています。EuroVelo1のルートの最南端でサイクリストにとって最も孤独な区間です。
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SECTION 4
サグレスからヴィラ・レアル・デ・サント・アントニオ
荒々しい大西洋から、穏やかな地中海の影響を受けたアルガルヴェ地方へ。断崖絶壁は黄金色の岩肌に変わり、ルートは再び賑やかなリゾート地や塩田の間を縫うように走ります。年間300日が晴天と言われる地中海らしい温暖な気候に変わります。
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計画のヒント
アクセス
ポルトガル鉄道(CP – Comboios de Portugal)は、自転車の持ち込みに対して非常に寛容で多くの区間でそのまま載せられるため、サイクリストにとって心強い味方です。各区間の主要な町では鉄道アクセスも比較的スムーズですが、SECTION3のリスボンからサグレス区間は、鉄道空白地帯で「鉄道の難所」として知られており、注意が必要です。
補給・宿
ポルトガルの田舎では、13:00〜15:00頃にレストランや商店が閉まることがあります。 12:30までにはランチや補給を済ませるか、それまでに午後の行動食を確保しておくといいです。とくにリスボンからサグレス区間は最も注意が必要で、 Sines(シネス)を過ぎると店が激減します。補給できる店やスーパーを見つけたら、飲料、パン、バナナ、ナッツなどを買い込んでおきましょう。
気候・装備
ポルトガルは南北に長い国で、全域で「大西洋の風」強く吹きます。サイクリストにとって、気温以上に「風向き」が旅の難易度を左右します。海岸線では夏場を中心にノルテ(Nortada)と呼ばれる北風が強く吹きますので、南北1,200kmは北から南に走ると楽なはず。(ぼくもポルトガルの北風経験者。) また、海から10km内陸に入るだけで気温が5°C以上上がります。ルートを外れて内陸を走る際などは、暑さ対策や熱中症対策をしてください。
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