EV1 アイルランド編

アイルランドの古都コーク付近

EuroVelo 1 · Ireland · Overview

緑の島と大西洋の風、ケルトの音色

アイルランドのEuroVelo 1は、南東の港町ロスレア・ハーバーからフェリーで上陸し、コーク・リムリック・ゴールウェーと西進、最後は北アイルランドの首都ベルファストへ。Wild Atlantic Way(ワイルド・アトランティック・ウェイ)と並走しながら、ケルトの音色、修道院遺跡、世界遺産モハーの断崖、ジャイアンツ・コーズウェーまでをつなぐ、約 1,000 km のスローツーリング・セクションです。

OVERVIEW

ルート概要

ウェールズ・フィッシュガードから Stena Line のフェリーで一晩、アイルランド南東のロスレア・ハーバーに上陸。EV1 はここから南西へ進路を取り、ウォーターフォード、コーク、ケリー州を経て大西洋岸の Wild Atlantic Way に合流。リムリック、ゴールウェー、モハーの断崖、コネマラを経て、北西のドニゴール方面へ。さらに北アイルランドに入りデリー、ジャイアンツ・コーズウェーを通って、最終的にベルファストへ至る約 1,000 km。多くは静かな田舎道や運河沿いの専用道(Greenway)で、自動車と接触するストレスは少なめ。一方で大西洋からの強風、起伏、雨と日常的に向き合う中・上級セクションです。フランスやスペインとは違う、湿った緑と石垣の世界が広がります。

ハイライト

HISTORY & CULTURE

ケルトの島、修道院と音楽

バイキングと修道僧: ウォーターフォードはバイキングが 914 年に築いたアイルランド最古の都市。一方、6〜9 世紀のアイルランドは「聖人と学者の島」と呼ばれ、ケルト・キリスト教の修道院が各地に残ります。海の遠征者と内陸の隠者という、二つの古層が共存する島。

ゲールタハト(Gaeltacht): ケリー、コネマラ、ドニゴールには今もアイルランド語(ゲール語)が日常で話される地域が点在。道路標識が緑色になっていればそこはゲールタハト。地元のパブでは英語と並んでアイリッシュが飛び交います。

トラディショナル・ミュージック: 夜のパブで突然はじまる「Session(セッション)」— フィドル、ティン・ホイッスル、ボーラン太鼓、アコーディオン。観光ショーではない、地元の人たちの日常としての音楽が、ゴールウェー、ディングル、ドゥーリンなどの町に根付いています。

WORLD HERITAGE

世界遺産

ジャイアンツ・コーズウェー(北アイルランド)  6 万本の玄武岩柱が海岸に整列する、火山活動が生んだ「巨人の道」。アントリム海岸最大の見どころ。

スケリッグ・マイケル(ケリー州沖)  ルートからフェリーで渡る孤島の修道院遺跡。6 世紀に建てられた石組みの庵が今も残り、『スター・ウォーズ』のロケ地としても有名。

モハーの断崖(クレア州)  ルート沿いの大西洋岸に屹立する高さ 200 m、長さ 8 km の断崖。世界遺産候補で、アイルランド観光最大の集客地のひとつ。

LANDSCAPE

緑の島、石垣、大西洋の風

南東部(ロスレア〜コーク): 比較的なだらかな田園と海岸が交互に現れる、入門にちょうど良い区間。低い石垣が緑の畑を区切り、農場の門の向こうから時々羊が顔を出します。

南西部(コーク〜ゴールウェー): Wild Atlantic Way と合流する区間。Ring of Kerry、ディングル半島、バレン高原、モハーの断崖と、見どころが連続する代わりに、強風と起伏に試される時間も長くなります。

西部〜北部(コネマラ・ドニゴール・アントリム海岸): 湖と山、泥炭地(ピートランド)と入江が織りなす、人口の少ないワイルドな風景。ジャイアンツ・コーズウェー周辺の玄武岩海岸はクライマックス。

FOOD

パブとシーフードとギネス

アイリッシュ・シチュー  ラム肉とジャガイモ、玉ねぎを煮込んだ素朴な家庭料理。冬の夕方、雨に濡れて到着したパブで頼む一皿は格別。
シーフード・チャウダー  大西洋岸の漁村で外せない。サーモン、ムール貝、白身魚、ジャガイモを乳白色のスープで。
ソーダ・ブレッド  重曹で発酵させずに焼く伝統パン。バターと地元のジャムを塗って朝食に。
ギネス  ダブリン本社の黒ビールはアイルランドのどのパブにもあり、しかも本場の方が圧倒的に美味い。
アイリッシュ・ウィスキー  ジェイムソン(ミドルトン)、ブッシュミルズ(北アイルランド)など蒸留所巡りも組み合わせる人多し。
フィッシュ&チップス  海岸町なら必須。岩塩と麦芽酢を効かせて、フィッシュガード港のベンチでとはまた違う、緑の島の味。

DETAILS

セクション

この区間を 4 つのセクションに分けて、通過地・世界遺産・歴史風土を順に紹介します。

SECTION 1

ロスレア・ハーバーからコーク

ウェールズ・フィッシュガードからのフェリーが着く南東部の港町ロスレア・ハーバーを出発。バイキングが築いたアイルランド最古の都市ウォーターフォード、ハンドカット・クリスタルで有名な工房街を経て、海岸町ヨールへ。終盤はリー川沿いに進み、アイルランド第二の都市コークに到着。比較的なだらかな田園と海岸が続く入門区間。

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SECTION 2

コークからリムリック

コークを離れ、グルメ都市キンセール、Ring of Kerry の入り口キラーニー国立公園、ゲール語が今も日常で話されるディングル半島を経て、シャノン川河口の街リムリックへ。ここから Wild Atlantic Way と本格的に合流し、大西洋からの強風と起伏を感じる中級セクションに入ります。スケリッグ・マイケルへのフェリー、ディングル半島の海岸線など、寄り道スポットが豊富。

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SECTION 3

リムリックからゴールウェー

リムリックからシャノン川を渡り、カルストの石灰岩台地バレン高原へ。岩肌の隙間に咲く北極と地中海の植物が同居する独特の地形を抜けると、いよいよモハーの断崖。高さ 200 m の絶壁が大西洋に屹立する世界的観光地です。終盤はゴールウェー湾沿いをアイルランド西海岸の文化首都ゴールウェーへ。Greenway(廃線跡サイクリングロード)の整備が進む、走りやすさと景観の両立した区間。

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SECTION 4

ゴールウェーからベルファスト

ゴールウェーから西へコネマラ国立公園、湖と石垣の風景を抜け、詩人イェイツの郷里スライゴへ。最北のドニゴール州はワイルドアトランティックウェイ最終区間で、過疎の村と荒涼とした入江が連続。陸路で北アイルランドに入国するとデリー/ロンドンデリーの城壁旧市街、世界遺産ジャイアンツ・コーズウェー、アントリム海岸を経て、ようやくタイタニック号建造地として知られる北アイルランドの首都ベルファストへ到着。約 400 km と最も長く、最も変化に富む終盤区間。

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旅のヒント

アクセス

ウェールズ・フィッシュガード〜ロスレア・ハーバーは Stena Line で約 3〜4 時間。自転車の積み込みは追加料金で対応。アイルランド国内の鉄道(Iarnród Éireann)はダブリンを中心に放射状に伸びていて、コーク・リムリック・ゴールウェーへの本数は多いものの、ルートに並走しない区間も多いため、輪行は計画的に。北アイルランドは Translink(NI Railways)が運営し、ベルファストとデリー・ダブリンを結ぶ。

ロスレア・ハーバー  上陸地点。ダブリン・ヒューストン駅への直通列車が出発。

ウォーターフォード  アイルランド最古の都市。ダブリンへの列車接続あり。

コーク  アイルランド第二の都市。空港もあり、欧州各地から直行便。

リムリック  シャノン国際空港(リムリック近郊)から大西洋横断便あり。

西部・北部は鉄道が少なく、長距離バス(Bus Éireann、Citylink)が主な公共交通。

ゴールウェー  西海岸の文化的中心。ダブリンへ列車で約 2 時間 30 分。

スライゴ  W.B. イェイツの郷里。ダブリン行きの列車で約 3 時間。

デリー/ロンドンデリー  北アイルランド第二の都市。ベルファストとは Translink の列車・バスで接続。

ベルファスト  終着点。スコットランド・ケアンライアン行きのフェリー(Stena Line)で EV1 イギリス北部区間へ接続。空港便でロンドン・ダブリンへ。

補給・宿

アイルランドの宿の定番は B&B(Bed & Breakfast)。村にひとつのパブ、ひとつの B&B、ひとつの教会 — というスケールの集落が連なり、地元の人との会話が宿選びの楽しみそのもの。Cyclist Welcome Ireland(観光庁認証)と Bord Fáilte のロゴが目印。北アイルランドは英国の Cyclists Welcome 認証と互換。長距離移動の日は Sustrans NISport Ireland Outdoors のオンライン地図・GPX が頼りになります。

気候・装備

アイルランド全体が大西洋性気候で、年間の降雨日数は 150〜225 日と多め。「天気を待っていたら何もできない」と地元の人が口にする土地です。

南東部(ロスレア〜コーク)  アイルランド国内では最も乾燥して暖かい一帯。「サニー・サウスイースト(Sunny South East)」と呼ばれ、夏は 18〜22 ℃で比較的快適。

南西部・西部(コーク〜ゴールウェー)  Wild Atlantic Way の真っ只中。風が強く、雨が頻繁に「シャワー」のように降っては止む。防水ジャケットとシューズカバーは常時携行が前提。

北部・北アイルランド(ドニゴール〜ベルファスト)  緯度が高いため夏至前後は 22 時頃まで明るく、長時間ライドが可能。ただし 10 月以降は風と雨が厳しく、フェリー欠航のリスクもあるため計画は早めに。